
こんにちは。
先日「1/2: VDIとは?~ 組織の働き方とIT運用を変える、そのメリット~」という記事を読みましたが、
VDIでCATIAを使う場合、なぜGPUが必要になるのでしょうか?

こんにちは。ご質問ありがとうございます。

今回は、VDI環境でCATIA(CAD)を利用する際に、GPUがなぜ重要なのかをご説明します。
まず、CATIAをはじめとするCAD/CAEソフトウェアは、以下のような非常に高いグラフィックス性能を必要とします。
- 3Dモデルの描画
- リアルタイムでの回転・拡大縮小
- 大規模アセンブリデータの読み込み
VDI環境では、これらの処理はすべてサーバー側で実行されるため、GPUは必須のコンポーネントとなります。GPUがない場合、画面操作が遅くなり、作業効率は大きく低下します。
そのため、VDIでCADを利用する際は、仮想化に対応したGPUを用いて、各仮想マシン(VM)にGPUリソースを割り当てる必要があります。
GPUとは?
GPUとは?
GPU(Graphics Processing Unit)は、2D/3Dの描画処理を専門に行うプロセッサ、つまり、パソコンの中で「映像や図面を描くことに特化した頭脳」のような存在でです。
CAD/CAM/CATIAのような用途では、
- 3Dモデルのスムーズな回転
- 大容量3Dファイルの高速オープン
- 安定した表示性能
を実現します。

GPUをVMごとに割り当てる、と言う表現を聞いたことがあるのですが、これはどういう意味ですか?

つまり、1枚のGPUを複数人で使う際に、それぞれに決まった分だけGPUの力を割り当てる仕組みのことを指します。これにより、他のユーザーの作業状況に左右されることなく、常に安定した性能でCAD作業が行えます。

なるほど。
では、VMごとに割り当てられたGPUは、どのように共有されるのでしょうか?

GPUの共有には、NVIDIAのvGPU(Virtual GPU)技術が使われます。
NVIDIA L4、A16、A40、L40、GRID Tesla などのエンタープライズ向けGPUは、1枚の物理GPUを複数の仮想GPUに分割し、複数のVMへ安全かつ効率的に割り当てることができます。
それぞれのVMは、自分専用のGPUを持っているかのように認識し、他のユーザーの影響を受けることなくGPUを利用できます。
VRAMとは
VRAMとは
- RAM:パソコン全体で使われる一般的なメモリ
- VRAM:画面表示や3D処理専用に使われるメモリ
VRAMには、CATIAで扱う3Dモデルの形状(ジオメトリ)、テクスチャ、描画情報など、「今まさに画面に表示・操作しているデータ」が保存されます。
vGPU(Virtual GPU)とは
vGPU (Virtual GPU)とは
- 1枚の物理GPUを仮想的に分割し、複数の仮想マシン(VM)で安全に共有できるようにする技術です。
vGPU/VRAM割り当て目安
vGPU/VRAM割り当てとは?
- 1枚の物理GPUを仮想的に分割し、各仮想デスクトップ(VM)にGPU性能とVRAM容量を割り当てる仕組みのことです。
これにより、
- 各VMは「自分専用のGPUとVRAM」を持っているように動作し
- 他のユーザーの作業に影響されにくく
- CAD/CATIAなどの3D作業を安定して行えます
===============================
① 小~中規模アセンブリ(~200~500部品)
- 4~8GB VRAM/VM
- スムーズな操作と安定した表示
② 大規模アセンブリ(1,000~5,000部品)
- 8~16GB VRAM/VM
- VRAM不足は回転・ズーム時の遅延を招く
③ 解析・シミュレーション・レンダリング
- 16GB以上、またはGPU全割り当て
- GPU計算とメモリを大量に使用
===============================
VRAMが不足すると…
- モデル操作がカクつく
- 読み込みが遅い
- 視点変更時の再描画
- OpenGL/DirectXエラー
- CATIAのクラッシュ
といった問題が発生します。
これは、VRAM不足時に処理がRAMやディスクへ退避し、GPUメモリより大幅に遅くなるためです。

大規模なCATIA作業中にサーバーが停止した場合、作業は失われますか?

はい、そのリスクはあります。
サーバー障害が発生すると、作業は即座に停止し、未保存データは失われる可能性があります。
そのため、多くの企業では、HAクラスタ(High Availability Cluster) を導入しています。

データが失われるリスクが存在するのですね!!
では、そのHAクラスタとは何ですか? なぜCAD用途で重要なのでしょうか?

HAクラスタは、複数のサーバーを1つのグループとして構成し、
1台が故障しても、別のサーバーに自動的に処理を引き継ぐ仕組みです。
CAD環境では、
- 作業中断を最小限に抑える
- 大規模アセンブリの再読み込みを回避
- データ損失リスクを低減
といった効果があります。

なるほど。
つまり、CATIAをVDIで本格的に使うなら、GPUとHAの両方が必要ということですね?

はい。特に大規模CAD/CAE環境では、両方を強く推奨します。
ポイントまとめ
1)GPU=性能
GPUなし → 動作が重く、エラー多発
適切なGPU → 高速表示、スムーズ操作、安定稼働
2)VDI=柔軟な働き方
どこからでも同じ作業環境
高価なワークステーション不要
どの端末からでも業務継続
3)HAクラスタ=設計業務の継続性
ダウンタイム=コスト
HAなし → 復旧待ち・作業遅延
HAあり → 数秒で再起動・即業務復帰

とてもよく分かりました。
VDIでCATIAを使うには、GPUとHAがこれほど重要だとは思いませんでした。
ありがとうございます。

NSSでは、GPU選定、vGPUサイズ設計、VDI全体構成についても、
最適な環境をご提案できます。


